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2019.01.24

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政令委任の限界

 政令委任の限界

千葉地裁平成7年2月22日判決 一部認容・一部却下(判タ894号131頁)
東京高裁平成7年11月28日判決 控訴棄却(確定)(判タ896号95頁)

Ⅰ.事実の概要
 訴外A協同組合の組合員であるX(原告)は、平成2年3月23日、Aから土地及び建物を購入し、同年5月14日、所有権移転登記を受けたが、その際に、登録免許税について、租税特別措置法(以下「措置法」という)78条の3第1項の規定する中小企業者が集団化等のため取得する土地又は建物の所有権の移転登記について軽減税率の特例の適用があることを知らずに登録免許税法(以下「登録税法」という)の税率を適用した結果、770万円余りの過誤納を生じた。Xは、同年7月頃、軽減税率規定の存在を知り、登記官Y1(被告)に対して過誤納金の返還を請求したが、Y1は、登録税法施行令42条の9第3項を受けた同法施行規則29条1項が登記申請書に貼付すべき旨を定めている知事の証明書が添付されていなかったので還付できないとした。そこで、Xは、平成3年2月20日、Y1に対し、知事の証明書を提出した上、登録税法31条2項に基づき所轄税務署長への還付通知を請求したが、Y1は同年3月13日付で還付通知はできない旨の通知をした。Xは、平成4年4月24日付で右通知について国税不服審判所に対し審査請求をしたが、請求は棄却された。そこで、Xは、Y1に対しては右通知の取消しを、Y2(国・被告)に対しては過誤納金について不当利得返還を請求した。

Ⅱ.争点
本件軽減規定が「政令で定めるところにより」としたことは、白地的に政令に委任するものか否か。

Ⅲ.原告の主張
 「本件軽減規定自体は軽減税率を適用する要件として登記当事者及び登記原因の実質的内容という実体的要件を定めているのに過ぎないのであるから、命令でこれ以上の適用要件を定めることはできない。従って、本件手続施行令及び本件手続規則の定める知事証明書の添付という手続は、登記手続の細目を規定するに過ぎず軽減税率適用のための租税法上の適用要件を定めるものではないと解すべきである。」
 「本件軽減規定の「政令の定めるところにより」という政令への委任は、極めて概括的かつ白地的委任であって、もしこれにより本件軽減規定自体が定める適用要件以上の要件を定めることが政令に委任されているのであれば、このような政令への委任は租税法律主義に反する。」

Ⅳ.被告の主張
 「知事証明書の添付を欠く本件申請書によっては本件軽減規定を適用する余地はないのであるが、原告は、知事証明書の添付という手続が措置法施行令及び同施行規則により定められているに過ぎないことを問題としている。しかし、本件軽減規定は、その政令委任部分において、軽減規定の適用を受けるための手続要件の細目を定めることを政令に委任しているのであって、本件手続施行令及び本件手続規則の定めは右委任に基づきその範囲内で規定されているものである。そして、本件軽減規定がこのように課税要件の細目の定めを政令に委任することは何ら租税法律主義に違反するものではない。」

Ⅴ.地裁判旨
 「・・・・・このような特例措置を適用するために実体的要件のほかに手続的要件を充足すべきものと定められている(換言すれば、手続的要件が履践されなければ失権する旨定められている)というためには、法律によりその旨が明らかにされている必要があると解すべきである。ところが、本件軽減規定は、「・・・・・これらの(実体的要件の合致する)登記に係る登録免許税の税率は、政令で定めるところにより、登録免許税法第9条の規定にかかわらず(軽減税率)とする。」というように規定しているに過ぎないのであり、その文言上、本件政令委任部分のほかに、手続的要件の充足を必要としているかどうかを判断するための手掛かりはない。そして、右政令委任部分は、右のように簡単なものであり、それだけでは、これを積極的に解すべきことが明らかであるとは認め難い。
 本件軽減規定は、手続的事項を軽減税率が適用されるための要件としているとは認め難いというほかないのであり、本件手続施行令及び本件手続規則中このような手続的要件を定める趣旨の部分は、その効力を認め難いと言うべきである。」

Ⅵ.高裁判旨
 「租税法律主義のもとで租税法規を解釈する場合には、ある事項を課税要件として追加するのかどうかについて法律に明文の規定がない場合、通常はその事項は課税要件ではないと解釈すべきものである。それにもかかわらず、「政令に定めるところによる」との抽象的な委任文言があることを根拠として、解釈によりある事項を課税要件として追加し、政令以下の法令においてその細目を規定することは、許されるべきものではない。
 したがって、租税特別措置法施行令42条の9第3項及び同法施行規則29条1項が、軽減税率による登記申請には特定の証明書の添付を要するものとした部分は、証明書の添付という手続的な事項を軽減税率による登記申請の受理要件という手続的な効果を有するにとどめるものとして有効であるが、右の手続的な事項を課税要件とし、登記申請時に証明書の添付がなければ、後に証明書を提出しても軽減税率の適用がないとする部分は、法律の有効な委任がないのに軽減税率の要件を加重したものとして無効である。」

Ⅶ.解説
1.委任立法
 憲法第41条は、「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」そして、憲法第59条は、「法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したときに法律となる。」と規定している。
 委任立法とは、「国会以外の機関が、法律の特別の委任を受けて、その機関に認められている法形式において、法規を定立すること」(注1)である。また、命令とは、「行政機関によって制定される法規を指す。これは、立法機関以外の機関による立法であり、例外的な立法である。」(注2)といわれている。まさに「命令」は、委任立法の典型といえる。
 社会経済現象は、複雑多岐にわたり、日々激変している。その一切を適時妥当に規律するために法律を制定することは不可能に近い。そこで、法律としては不可能であっても、命令又は規則をもってすれば可能であるという場合に立法を必要とするならば、委任立法によるほかはないといえる(注3)。
 委任立法が憲法上制定可能か否かについては明文規定がない。しかし、内閣の行う事務について、憲法第73条6号は、「この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。」と規定している。又、内閣法第11条は、「政令には、法律の委任がなければ、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない。」と規定している。このようなことから、法律の委任の範囲において委任立法は認められていると解されている(注4)。しかし、委任立法は無制限に認められるものではなく、その限界について検討されなければならない。

2.委任立法の限界
 委任立法が認められるにしても、委任の範囲の限界を明確にする必要がある。これについて、「法律の委任は立法権が国会に属するという憲法の原則を崩さない程度において、個別的・具体的に限られた特別の事項についてのみ行われうると解される。したがって、一般的・包括的な白紙委任は認められない。」(注5)といわれている。委任命令で規定できる事項であるが、それは法律の補充規定、法律の解釈規定等に限られるべきで、包括的委任規定、法律自体を形式的に廃止又は変更する規定の設定はできないと解すべきである(注6)。
 委任立法が一定の限界の下に認められるにしても、再委任が認められるか否かという問題がある。法律自体に再委任を認める規定が存在しないにも拘わらず、政令に委任された事項をさらに省令などに再委任することは、政令に委任する法律の趣旨に反するもので、再委任規定を設けた政令及び省令は法律の根拠を欠き違法なものと考える(注7)。
 ともすれば、委任立法は国会の決議を経る必要がないので拡張されやすい。そこで、委任立法が拡張されないために、委任命令制定手続について、その明確さが必要である。また、利害関係人や学識経験者等の命令参加制度、国会への提示制度等も考慮されるべきで、いずれの場合も国会による随時委任の撤回、修正等、常に国会の監視・監督の下におかれることが必要である(注8)。

3.租税法における委任立法
 租税法における委任立法の必要性について、田中二郎教授は、「租税法の対象とする経済現象は、きわめて多種多様であり、しかも激しく変遷していくので、これらに対応する定めを法律の形式で完全にととのえておくことは頗る困難であるから、その具体的な定めを命令に委任し、事情の変遷に伴って機動的に改廃していく必要がある。」(注9)と述べている。又、委任立法の限界について金子宏教授は、「憲法の解釈上、政令・省令等の他の法形式への委任が許されないわけではないが、地方税の賦課のように憲法上特別の例外が予定されていると思われる場合のほかは、それは具体的・個別的委任に限られ、一般的・白地的委任は課税要件法定主義の趣旨に反し許されないと解すべきである。」(注10)と説かれている。そして、波多野弘教授は、「・・・・少なくとも課税要件定立の委任は、許されないと解すべきで、命令への委任に際しては、概括的・白地的委任は許されず、委任を行う法律が、①委任の範囲を明確に限定し、②受任命令制定にあたっての目的、基準又は指標を明らかにすること、換言すれば法律自体が委任の目的・内容・程度を明らかにすることを必要とする、と解すべきである。」(注11)と述べている。
 このような見解に対立する見解として中川一郎教授は、「・・・・従って租税に関する事項は、すべて完結的に、かつ、明確に、法律をもって定めなければならないことになる。法律で規定しても、それは大綱のみであり、細目は政令・省令に委任するようなことでは、租税に関する事項を立法事項とする租税法律主義の目的は達成されないのである。」(注12)と主張されている。
 租税法律主義を非常に厳格に解して、すべてを法律によって規定することは変化の激しい経済実体に対応するのは困難である。そこで委任立法を制定する場合には、課税要件の定立は認めるべきではないが、法律で委任の範囲を限定し、命令制定の目的・基準を明らかにし、個別的・具体的に命令(政令・省令)へ委任することは認められると考える。

4.委任立法に関する租税判例
(1)委任立法を認めた判例
 旧法人税法第9条第7項の政令委任である法人税法施行規則第10条の3について、「右委任の範囲もいささか広範囲に亘るきらいがあり、決して好ましいありかたではなく、将来法律に規定するようになすべき部分もあると考えるけれども、租税関係における具体的な経済的利益なるものは、たえず進展し、かつ、複雑化する経済界の実情に即応して捕捉しなければならない。この現実の問題をその立法自体のもつ技術的、期間的関係に関連して考えると、今だもって違憲と断ずることはできない。」(熊本地裁判決昭和39年12月25日、行集15巻12号2343頁)と判示している。法人税法施行規則第10条の3第3項は、給与とは、「賞与及び退職金以外の給与」である旨の解釈を示したもので内容は当然のことを規定しているので問題はないと考える。しかし、規定の仕方、つまり委任の方法が広範囲に亘るので問題があると判決は指摘している。
 上記判決のほか、委任立法を認めたものとして、長崎地裁判決昭和42年10月6日(行集18巻10号1281頁)、松江地裁判決昭和43年4月17日(行集19巻4号661頁)がある。
(2)委任立法を認めなかった判例
①旧法人税法施行規則10条の3第6項4号について、「使用人分賞与として損金に計上され課税上の対象とならなかったはずのものが、益金に計上されることによってこの部分を新たに課税の対象とするもので、要するに新たな租税を設けると同一の効果を招来するものである。これらの株主及び同族関係者について他の見地からこの規則のような取扱をしようとするならば租税法律主義の建前上それは法律によってなすべきものである。旧法人税法(昭和34年法律196号による改正前のもの)9条7項の「所得の計算に関する事項の委任命令」に基づく規則をもってしては、このような新たな租税を設けると同一の効果を招来する基本的な内容を追加規定することはなし得ないというべきである。同規則10条の3第6項4号は租税法律主義に違反するもので適用できない。」(大阪地裁判決昭和41年5月30日、行集17巻5号591頁)と判示した。この大阪地裁判決は、租税法において命令規定が租税法律主義に反するとした画期的な判決であった。しかし、旧法9条7項が一般的・包括的委任規定であるから無効としたのか否かの判断は必ずしも明らかではない、という疑問が残る(注13)。上記判決以外にも、昭和41年10月31日(行集17巻10号1240頁)に、広島地裁でも委任立法を無効とする判決が出ている。
② ①の控訴審判決は、「規則10条の3第6項4号の規定は、国民の権利義務に多大の影響を及ぼすものであることはこの規定の趣旨から明白であるし、旧法9条1項にはその解釈規定を設けることを命令に委任する文言はない。当裁判所は、右規則第一節の二の覚規定は、旧法9条8項の委任に基づくと解する。旧法9条8項は、「前6(改正前5)項(9条2項ないし7(改正前6)項)及び9条の2ないし9に規定するものの外、第1項の所得の計算に関し必要な事項は命令でこれを定める。」と規定しているので、益金損金への算入、不算入についてまで、命令で、右に列挙された諸条項と同様の定めができるように見える。
しかし、租税法律主義の原則から、法律が命令に委任する場合には、法律自体から委任の目的、内容、程度などが明らかにされていることが必要であり、損金益金への算入不算入といった課税要件について、法律で概括的、白地的に命令に委任することは許されないと解するのが相当である。」(大阪高裁判決昭和43年6月28日、行集19巻6号1130頁)と判示した。
 金子宏教授は、本件の評釈において、「旧規則10条の3第6項4号を見ると、それは明白な委任の根拠を欠いていたといわざるをえない。旧法9条7項の、「第一項の所得の計算に関し必要な事項は、命令でこれを定める」という規定が、立法者意思において、課税要件の定めを行政権に委任する趣旨の規定であったのか、それとも所得の計算に関し法律の定めを執行するための規定は命令で定める(いわゆる執行命令)を注意的に規定する趣旨であったのかは、必ずしも明らかでないが、もし後者であるとすれば、規則10条の3第6項4号の規定内容は、前述のように執行命令事項ではないから、それは委任の根拠のない規定であることになり、もし前者であるとしても、法9条7項は委任規定としては一般的・包括的であり、かかる委任は憲法上許されないことになるであろう。」(注7)と述べている。
 大阪高裁は、「租税法律主義の原則から、法律が命令に委任する場合には、法律自体から委任の目的、内容、程度などが明らかにされていることが必要であり・・・・・」と判示した。そかし。課税要件についてどの程度まで明確に限定すれば委任できるかという明確性の程度について明らかにしていないという点の問題を残している。
 なお、旧法人税法における当該規則は、昭和40年の法人税法の改正により第35条に規定することで立法上の解決をみた。

5.本判決の検討
 最高裁は租税法律主義の意義について、「新たに租税を課し又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要としている(84条)。それゆえ、課税要件及び租税の賦課徴収の手続は、法律で明確に定めることが必要であるが、憲法自体は、その内容について特に定めることをせず、これを法律の定めるところに委ねているのである。」(最高裁大法廷判決昭和60年3月27日、民集39巻2号247頁)と判示している(注15)。
 納税義務が成立するために必要な要件である課税要件には、納税義務者、課税物件、帰属、課税標準、税率を挙げることができる。課税要件・租税の賦課徴収手続は法律で明確に規定することが必要であるが、政令・省令に個別的・具体的に委任することは許されるとしても、課税要件を定立する委任、概括的・白地的な委任は許されないと考える。
 原告は、措置法78条の3第1項の軽減税率の適用を受けられることを知らなかったという法の不知等があった。このような場合には、通常は宥恕規定が置かれているのであるが、本件軽減規定には宥恕規定は置かれていなかった。しかし、例えば措置法41条8項、70条5項等には、「大蔵省令で定めるところにより、・・・・・・書類の添付がある場合に限り、適用する。」「その他大蔵省令で定める書類を添付しない場合には、適用しない。」旨の規定が置かれている。本件措置法自体に失権規定が置かれていないのに命令(施行令、施行規則)で失権の要件を定められているとの解釈は租税法律主義に反するとの原告の主張に賛同する。又、原告は後に、知事証明書を提出したことにより軽減規定の要件を具備するに至っている。
 千葉地裁は、「本件軽減規定は、手続的事項を軽減税率が適用されるための要件としているとは認めがたいというほかないのであり、本件手続施行令及び本件手続規則中このような手続要件を定める趣旨の部分は、その効力を認め難いというべきである。」と判示し。そして、東京高裁は、「『政令の定めるところによる』との抽象的な委任文言があることを根拠として、解釈によりある事項を課税要件に追加し、政令以下の法令においてその細目を規定することは、許されるべきものではない。」と判示した。すなわち、措置法78条の3第1項は、手続的要件の充足を軽減税率適用の要件とは定めていない。そして、課税要件追加の細目の定めを『政令の定めるところによる』として政令委任したことは課税要件の概括的・白地的委任であり、無効とした判決は妥当である。

6.おわりに
 租税法律主義から課税要件はできる限り詳細かつ網羅的に規定されると共に、その内容について明確であることが要請される。課税要件を明確にすることは、課税庁の独自の法解釈適用を阻止し、納税者が適正な納税を行うことを可能とするために重要なことである。さらに租税法律主義は、国民の経済生活に対して法的安定性と予測可能性を与えることによって財産権の保障が確保されるという機能を有している。
 租税法は、日々変化する複雑多様な経済現象に対処して適切な課税を実現することが要請されている。しかし、すべてを法律で規定することは困難であるので、法律で委任の範囲を限定し、個別・具体的に命令へ委任することは認められると解する。その場合、課税要件を定立する命令委任は許されないと考える。
 本件の東京高裁判決は、法律の有効な委任がないのに、「政令の定めるところによる」ことを根拠としてある事項を課税要件として追加して、政令以下の法令で規定した細目を無効とした。この判決は改めて租税法律主義の重要性を確認すると共に、租税法における委任立法(政令・省令)は法律の範囲を超えないように慎重に制定しなければならないことへの警鐘と受け止めなければならない。

<注 記>
(注1)清宮四郎・佐藤功編『憲法講座第4巻』有斐閣(1964年)169頁
    委任立法の一般的解説に次の論文がある。公法研究第14号「Ⅰ委任立法」で特集が組まれている。宮沢俊義「立法行政両機関の間の権限分配の原理1,2,3,完」国家学会雑誌第46巻10~12号。佐々木惣一「政令及び規則の性質」自治研究第24巻第5号1頁。佐藤功「法律と命令」国家学会雑誌第71巻第1号66頁。成田頼明「問題点はらむ委任立法(1,2,3,4,終)」時の法令346号~350号。
(注2)伊藤正巳『憲法(第三版)』弘文堂(1995年)670頁
(注3)清宮・佐藤編 前掲(注1)171頁
    「法規命令は、命令を発する権限の所在を標準として、政令(憲法73条6号、内
閣法11条)、総理府令・省令(国家行政組織法12条)、外局規則(国家行政組織
法13条、独禁法76条等)、独立機関の規則(会計検査院法38条、国家公務員法
16条1項等)の別がある」(田中二郎『行政法総論(法律学全集6)』有斐閣 366
頁)。「執行命令とは、法律の規定を執行するために必要な細則を定める命令をい
い、委任命令とは、法律によって委任せられた事項を定める命令をいう」(田中二
郎 同上 428頁)。「以前、政令を施行規則と呼び、政令を施行細則と呼んでいた
時代があるから、判例を読む場合には注意を要する」(金子宏『租税法(第十二版)』
弘文堂(2007年)92頁)。
(注4)宮沢俊義『日本国憲法』日本評論社(1968年)572頁
(注5)清宮四郎『憲法Ⅱ〔第三版〕』有斐閣(1979年)430頁
    同様の主張として、「立法権が国会に属するという原則を実質的に覆すような一般的・包括的委任は許されず、法律による政令への委任事項は、個別的・具体的に限定されたものでなければならない。」(伊藤 前掲(注2)672頁)がある。
   「法律の委任の許される範囲を論ずるにあたっては、・・・・・具体的・個別的と抽象的・一般的とのちがいが、結局は程度の差にすぎない以上、その間の限界を画すことは、実際問題としては、極めてむずかしい。」(宮沢 前掲(注4)573頁)との指摘がある。
   「委任命令の限界については、委任方法の問題と委任命令の内容の問題の二つの局面があるといわれる。すなわち、委任の方法を誤った場合(立法府のミス)と委任の限界を超えて命令を制定した場合(行政府のミス)である。」(北村嘉宣「3.政令への委任の限界」租税判例百選(第三版)9頁)と区別する見解がある。
(注6)田中 前掲(注3)367頁
(注7)杉村敏正「立法の委任②」憲法判例百選(第一版)253頁
    田中二郎教授は、「実際上には、法律が一定事項を政令の定めるところに委任している場合に、政令が、その中の一定事項を更に省令又は行政官庁の告示(又は、規定)に委任するような事例が必ずしも少なくない。このような再委任がどの範囲に許されるか、殊に、それが犯罪構成要件の委任のごとき場合においては、果たして適法な委任といえるかどうか、甚だ疑わしい。」(田中 前掲(注3)367頁)と述べている。
    再委任に関する学説には、「①授権法律がかかる再委任を予め承認してない限り否定する説、②とくに罰則制定の再委任について消極的な説、③再委任の範囲等の限定性に要件を付した上で承認する説」(雄川一郎他編『現代行政法大系第2巻』
    有斐閣(1984年)73頁)がある。
(注8)覚道豊治「委任立法の限界」ジュリスト300号60頁
(注9)田中二郎『租税法〔新版〕』有斐閣(1981年)90頁
    租税法に関する委任立法について論じたものに、中川一郎「税法における包括委任規定の再検討(1)、(2)完」税法学188号1頁、税法学189号1頁がある。
(注10)金子宏「市民と租税」加藤一郎編『現代法と市民』岩波書店(1966年)316頁
(注11)波多野弘「租税法の法源と効力」『租税法講座1』ぎょうせい(1976年)270頁

(注12)中川一郎『税法学体系(1)総論』三晃社(1970年)65頁
(注13)波多野 前掲(注11)273頁
    大阪地裁判決の判例評釈として、中川一郎「判例評釈〔225〕」シュトイエル52号1頁、北野弘久「兼務役員賞与の税法規定の違憲性」産業経理27巻3号59頁、村井正「4.法律と政令」租税判例百選(第一版)14頁がある。
(注14)金子宏「行政判例研究297」自治研究第46巻第4号144頁
    その他の大阪高裁判決の判例評釈として、中川一郎「判例評釈〔322〕」シュトイエル77号6頁、山内一夫「政令への委任の限界」租税判例百選(第二版)14頁、
    北村嘉宣「3.政令への委任の限界」租税判例百選(第三版)8頁、清永敬次「政令への委任の限界」『税務署の判断と裁判所の判断』六法出版(1986年)1頁、がある。
(注15)最高裁は昭和30年3月23日判決で、「・・・・されば、日本国憲法の下では、租税を創設し、改廃するのはもとより、納税義務者、課税標準、徴税の手続はすべて前示のとおり法律に基づいて定められなければならないと同時に法律に基づいて定めるところに委ねられていると解すべきである。」(民集9巻3号336頁)と判示している。

<判例評釈>
(地裁判決)
佐藤英明「租税法律主義違反を理由とする登録免許税誤納金還付請求の可否」判例評論451号26頁(判例時報1570号180頁)
東亜由美「判例紹介」民事研修468号50頁
(高裁判決)
布田勉「租税法律主義と委任立法のあり方」平成8年度重要判例解説25頁      
都築弘「租税判例①」平成8年度主要民事判例解説320頁
徳田薫「租税特別措置法上の登録免許税の軽減規定に基づく税額と通常の税額との差額の違法性」平成7年行政関係判例解説188頁
植垣勝裕「判例紹介」民事研修465号48頁
「高等裁判所判例紹介」税務事例28巻9号14頁
増田英敏「租税法律主義と政令委任の限界」『租税法研究第25号』161頁
山口敬三郎「租税法における委任立法に関する一考察」税理40巻1号23頁

(本稿は山口敬三郎「租税法における委任立法に関する一考察」を加筆修正したしたものである。)